平安遷都からの史跡
神泉苑は、平安京遷都の時に桓武天皇が大内裏の南東に造営した、南北約500m、東西約240m、面積約3万坪の巨大な庭園で、二条城もすっぽりと入るぐらいの大きさでした。宮中附属の禁苑(一般人は入れない皇室だけの庭園)で大池、泉、中島、小川、森林などの自然を取り込んだみごとな庭園でした。その庭園の美しさを多くの歌人が和歌に詠んでいます。大池には歴代の天皇や公家、貴族が船を浮かべ、舟遊びや観花、詩歌、管弦を楽しみました。京都で最も古い苑池で、嵯峨天皇が日本で最初に花見をした場所としても有名です。
現在の神泉苑の前の通りは「御池通り」ですが、この「御池」は神泉苑を指しています。
祇園祭発祥の地
京都の7月と言えば、だれもが知っている祇園祭ですが、実は祇園祭は神泉苑から始まりました。貞観5年(863年)に京都で疫病が大流行します。当時、疫病が流行するのは恨みを残して亡くなった人の御霊の祟りだと考えられていたので、多くの御霊を鎮めるために神泉苑で御霊会(ごりょうえ)が行われました。貞観11年(869年)、当時の律令制度の国の数である66本の鉾を作り、神泉苑の南端(現在の八坂神社三条御供社)に鉾を立てて祇園社(現在の八坂神社)から神輿を出して行列する御霊会が開かれました。これが現在の祇園祭の原形だそうです。
参詣は照明がともる夕方が吉
昼間でもきれいなところなのですが、照明が点灯する夕方の方が人通りも少なく、厳かに感じられます。
私が写真を撮りに行ったときは、ザッと雨が降った後で雲が低く残っており、とても神々しい雰囲気でしたよ。
御池通りの鳥居です。二条城の南側にあたる押小路通りに北門があるのですが、私は御池通りから入る方が好きです。
善女龍王(ぜんにょりゅうおう)社が見えます。
何とも言えない厳かな風景です。ほんとに京都市内だろうかと思うほどです。足早に流れていく雲が雰囲気出してます。
弁天堂です。
鎮守稲荷社です。この横に、狂言堂と狂言観覧席があります。
こちらが本殿です。
本殿の対面に、鯉塚、亀塚があります。鯉、亀が彫刻されています。
善女龍王社です。空海が勧請しました。
天長元年(824年)、淳和天皇は長引く干ばつに対して西寺(興福寺)の守敏僧都と東寺(教王護国寺)の空海に対して祈雨の修法(雨乞いの祈祷)を命じます。最初に真言密教にも通じた守敏が7日間にわたって修法を行いましたがあまり効果がなく、雨は降りましたが国中を潤すほどではありませんでした。次に空海が大内裏に接していた神泉苑で修法を行いましたが、1滴の雨も降りません。どうなっているのかと調べると、守敏が呪力を使って国中の龍神(水、雨の神様)を瓶の中に閉じ込めてしまったのでした。しかしただ一体、善女龍王だけは守敏の手から逃れていたので天竺の無熱池(むねっち)から呼び寄せて、三日間に渡り国中に大雨を降らせることができした。その時から善女龍王は神泉苑の池に棲みつき、神泉苑の池は季節を問わず、どんなに日照りが続いても枯れることはないという伝説になりました。
本殿から善女龍王社に「法成橋」が掛けられてあるのですが、この橋がポイントです。一つだけ心に願いを念じながら橋を渡って善女龍王社にお詣りすると、その願いは必ず成就すると言われています。
これはまさしく恋愛成就にもってこいではないですか。一人だけですよ、欲張ってはいけません。
それから、恋愛成就でもう一つ。
ここは源義経と静御前が出会った場所で有名です。これも、雨乞いと関係のある話です。寿永元年(1182年)、大干ばつとなり鴨川や桂川の水も絶えてしまうほどで、後白河法皇は100人の高僧に祈雨の修法をさせましたが雨は降りませんでした。次に、龍神様を喜ばせようと100人の白拍子に雨乞いの舞を舞わせます。しかし、99人の白拍子が舞っても、雨は降りませんでした。「あと一人舞ったくらいで龍神様が雨を降らせるだろうか」という意見もあったのですが、後白河法皇は静御前に舞わせました。100人目の静御前が「法成橋」で舞いを奉納した直後に大雨が降り始め三日間降り続きました。法皇は感激して、静御前に「日本一」の称号を与えたといわれます。
そして、その時にいた義経は美しく舞う静御前に一目ぼれして恋に落ち、静御前を側室に迎え入れたと伝えられています。
善女龍王社は縁結びとしても絶大なるご利益があるのです。法成橋を渡って、善女龍王社にお詣りし、良縁を呼び寄せましょう。
神泉苑では毎年5月3日の夕方に、法成橋で「静御前の舞」が奉納されますので、ぜひともご覧ください。
法成橋と善女龍王社。
上の画像の右端に、祠が移っていますね。これが日本でも唯一の「恵方社」です。この祠には歳徳神(としとくじん)が祀られています。
恵方(節分の恵方巻を食べるときに向く方向:縁起が良いとされる方向)は暦によって毎年変わりますよね。この祠は、「その年の恵方」に向かって動かす(回す)ことができます。
毎年、大晦日の夜の10時30分に次の年の恵方へ祠の正面が向けられます。歳徳神は一年間の幸せと財産のご利益があるそうです。
二条城のすぐ南側にある神泉苑。行事のある時以外は人通りも少なく静香に参詣できます。良縁祈願、恋愛成就、待ったなし。ぜひとも参詣していただきたい場所です。
神泉苑 平八
神泉苑には平八さんが隣接しているので、お食事はいかがでしょうか。料亭から平安京の名勝を眺めて、京懐石などをいただけます。
画像の「龍王船」でもお食事ができるそうです。(要予約)
アクセス
- 京都市バス「神泉苑前」下車、すぐ
- 京都市バス「二条駅前」下車、徒歩5分
- 京都市バス「堀川御池」下車、徒歩5分
- 京都市営地下鉄「二条駅」下車、徒歩5分
- 京都市営地下鉄「二条城前」下車、徒歩5分