京都の治水
以前に「葛野大堰」のことを書きましたが、今回はその続きに当たる「洛西用水(桂川用水)」を歩きます。
平安京が造営されるよりももっと前に、大陸(新羅)から秦氏という豪族が京都にやってきました。秦氏は現在で言う「太秦(うずまさ)」を中心に、嵯峨嵐山から洛西にかけてを支配した豪族です。
その秦氏は、5世紀頃に大陸の技術を駆使して、葛野川(現在の桂川)に「葛野大堰」とよばれる「堰(せき)」を作りました。稲作のための水路を整備して洛西を灌漑し、葛野川の水量を調整して洪水を防ぐものでした。
そして洛西方面に水を引くための取水口が「一ノ井堰」として作られます。「葛野大堰」も「一ノ井堰」も当時のものは残っていませんが、川底には「葛野大堰」の痕跡が残っているそうです。
「中之島」から見た現代の「一ノ井堰」です。「大堰川」の流れを「中之島」中之島の右岸に流すように堰き止めています。
川底は何段かの堰の跡のようなものが残っています。
もう少し下流に「渡月橋」があります。
「一ノ井堰」も近代化されていています。この上流で有名な「三船祭り」が行われます。
これより上流は風情がありますね。
「一ノ井堰」の説明板が設置されています。
ここから「洛西用水」として、洛西はもちろんのこと、向日市や長岡京市の方までつながっています。
「中之島」の右岸に流れる分流です。屋形船の乗り場があります。「渡月小橋」が見えています。
渡月小橋のもう少し下流に、洛西用水の取水口(一ノ井取水口)があります。上の写真の真ん中で縦の柵が建てられている部分です。
「渡月小橋」を渡って、取水口の方に行ってみます。
「渡月小橋」の近くには、過去の「渡月橋」の礎石と思しき石が残されています。
こちらもそうですね。
「渡月小橋」まで来ました。
取水口に来ましたよ。その真上は広いスペースになってクレーンとトラックがあります。
実はこのトラックは「保津川下り」の船を亀岡まで運ぶためのトラックです。三艘ほど積んで国道9号線を戻っていきます。
さっきは、この対岸の「中之島」から写真を撮ってました。
取水口横の道の反対側に石碑が建っています。
「一ノ井堰碑」と刻まれています。昔の「一ノ井堰」はこのあたりにあったものと推定されています。
その碑の横の茂みの中を見下ろすと、ここから「洛西用水」が始まっています。
ちょっと見にくいですね。こちらはこれからたどっていく「西幹線水路」です。「一ノ井川」とも呼ばれます。けっこうな流量が流れています。この後は住宅の裏手を流れているので用水沿いを歩くことはできません。
こちらはもう一本の「東幹線水路」です。「東一ノ井川」とも呼ばれます。桂川に近いところを下っていきます。取水口からしばらくは、この2本の用水路は並行して流れています。「東幹線水路」はまた別の機会にたどりましょう。
「西幹線水路」をたどって「一ノ川橋」まで来ました。この先に阪急「嵐山駅」があります。
ただしこの橋は「東幹線水路」の方の端です。
「東幹線水路」のほうがちょっと大きいですね。住宅のすぐ横をくねくねと流れています。
「東幹線水路」とはここでお別れです。
こちらは「西幹線水路」です。先ほどの「一ノ川橋」の隣にある「中尾橋」です。
「西幹線水路」も住宅街を抜けていくので、上の画像のような小さな橋が架かっています。欄干が無いので気を付けないと落っこちそうですよ。
塀の横を流れてますね。なんかすごい光景です。
住宅街の中をゆっくりと下流に向かいます。「西幹線水路」ができたころは、田んぼの真ん中だったんでしょうね。
途中「西光院」というお寺がありました。
西行に関する由緒があるお寺のようですね。
お参りの方がいらっしゃいます。
ガラス越しではありますが、きらびやかな本堂が見えています。
さて「西幹線水路」は道の下をくぐり流れていきます。
水路を挟んで、道の反対側に家を建てると、どうしても橋が必要になりますね。個々の家の前に橋があります。
まだまだ流れていきますよ。
懐かしい「牛乳箱」がありました。今でも使っているのでしょうか。
水路は続きますが、すぐ近くに田んぼは全然ありませんね。
少しよどんだ水ですが、どんどこ流れていきます。
と、「西幹線水路」が道から離れていきます。
「西幹線水路」が塀の中に入っていきますよ。
どこへ入っていくのかと思ったら「松尾大社」の中でした。境内を抜けてまだまだ流れていきますが、今回はここまで。
ほぼ田んぼに巡り合わずに「松尾大社」まで来ました。松尾大社の境内では「西幹線水路(一ノ井川)」沿いの山吹の花が有名です。この先も歩くのですが、はてさてどこで田んぼと出くわすのか…続きをお楽しみに。
アクセス
- 京都市バス「嵐山高専」下車、徒歩2分
コメント
サイフォン水路の検索でたどり着きました。
最近、水路の魅力にはまった者です。
素晴らしい水路の旅ですね。
名所巡りも良いですが、水路から巡る京都の旅もまた楽しそうです。
なにより日常的な風景に溶け込んだ高度差の構造が魅力的です。
小さな水路にかかる橋たちも楽しげですし、わずかなスペースを効率的に利用して生活を豊かにする古人の知恵を感じます。
ご紹介ありがとうございました。
たなま さん おはようございます。
お褒めのコメントをいただき、ありがとうございます。
近年開削された琵琶湖疏水をはじめ、太古の昔から治水の施設がたくさん作られてきた京都です。
碁盤の目の一つの通りを端から端まで歩くのも楽しいですが、疎水や用水を起点から終点まで歩くと、時代の流れも感じられます。
最近、町の中心部では暗渠となってしまっているところもありますが、水と人とのかかわりを大切にする取り組みが増えてきてます。
紫明通りから堀川にかけての親水スペースなんかも楽しいですよ。
私は京都が大好きで、少しマイナーなところに京都らしさを感じますので、伝え方はへたくそですが、これからもあまり知られていない京都を紹介しようと思ってます。
どうぞよろしく。
Jun@Kyoto