夕顔之墳 源氏物語夕顔伝説

熱狂的ファン、墓を作る

京都市下京区にある「夕顔之墳」です。つまり「夕顔」の「墓」ですね。

「夕顔」といえば「源氏物語」に出てきた「夕顔の君」のことですが、「源氏物語」は「紫式部」の小説(フィクション)であり、その登場人物の墓とはどういうことでしょうか。

とりあえず行ってみましょうか。

場所は京都市下京区「堺町通り」の「高辻通り」を下ったところです。石碑は少し古い一軒家の前にあります。

夕顔之墳 No2

この家の中庭に「墳」が残っているらしいのですが、見学はできないようですね。

夕顔之墳 No3

「夕顔」は「光源氏」の年長の親友である「頭中将」の愛人であり、二人は「玉鬘(たまかづら)」という女の子を儲けています。しかし正妻である桐壺帝の右大臣の四の君に知れるところとなり、都から追い払われてしまいます。「夕顔」は一旦乳母の西の京に移ったのですが、娘を残して再び京の五条に仮住まいをしていました。その住まいの隣が「光源氏」の乳母の家という、なんとも絶妙な設定で物語は進みます。

或る時、年老いた乳母(惟光:これみつの母)の見舞いに行ったところ、源氏は隣の垣根に咲くユウガオの花に目を留めました。取りにやらせたところ、童女が扇にユウガオを乗せて持ってきました。ユウガオには

心あてに其れかとぞ見る白露の 光添えたる夕顔の花

と歌が添えられていました。隣の住人が和歌で返答するという市井の女とも思えない教養を持っていることに興味を持った源氏は、惟光を使って近づき、身分を隠して彼女のもとに通うようになりました。夕顔はおっとりとはしているものの無垢な雰囲気を備え、自分の素性は明かさないもののどことなく品がある不思議な女性であり、逢瀬の度に頼りきって身を預ける風情が心をそそり、源氏は彼女にのめりこんでいきます。

夕顔之墳 No4

八月十五夜、夕顔のもとで一夜を過した源氏は、翌朝、夕顔をそっと外へ連れ出します。夕顔の家の者には誰も知らせず、右近(うこん)という侍女のみを伴って、逢引の舞台として寂れた「某院(なにがしのいん:源融(みなもとのとおる)の旧邸六条河原院)」に夕顔を連れ込みます。

夜になり、二人はそのまま寝入ってしまいます。深夜になると、源氏は枕元にたいそう愛らしい女性がいて、その女性が自分のところへ訪ねてこない源氏への恨み事をつぶやく夢を見ます。はっと目を覚ましますと、それは嫉妬に狂った「六条御息所(みやすどころ)」の生霊で、夕顔はとりつかれて、恐怖のあまり息絶えてしまいました。

源氏は慌てふためきますが、やっと明け方になって惟光が駆けつけます。惟光と相談し、この醜聞が噂になって宮中に知れ渡ると厄介なので、惟光は夕顔の遺骸を鳥辺野の知り合いの庵室に運び込み、葬儀の手配をしました。

というのが「源氏物語」の「夕顔」の話ですが、この後、「光源氏」は「思い病」になり北山に隠棲しています。そして、夕顔の墓が「堺町通り」の「高辻」を下った「夕顔町」にできることになります。

元々はフィクションであった話が、いつの間にか現実世界のものとなって出現し、現在も護られて存続しているという京都の街って、なかなか楽しいですね。当時の熱狂的な源氏物語ファンによる聖地巡礼や町おこしが、伝説となって現代まで続いてるようなものなんでしょうね。

アクセス

  • 京都市バス「烏丸松原」下車、徒歩7分

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