何気ない風景
今回は、史跡や神社仏閣ではなく、なんということはない「堰堤(えんてい)」の紹介です。「堰堤」なんていう言葉は普通は使いませんよね。日常生活には、とんと関係のない言葉だと思います。でも「堰(せき)」と「堤(つつみ)」なので、字面からなんとなく「ほ~ん。」と分かったような気がしますよね。ご想像の通りのものですよ。
そして「堰堤」の中でも、特に変わったことのない「柊野堰堤」です。「柊野堰堤」があるのは上賀茂の北のはずれ、もうそろそろ住宅が途切れて山間部に突入するあたりです。堰堤がある川は当然「賀茂川」です。
私は川の東の山麓からアプローチします。
山麓の高台から見下ろす上賀茂、西賀茂地域です。目の前の校舎は京都市立柊野小学校です。
坂を下って、交差点を超えると府道38号線、「雲ヶ畑街道」にでます。
「雲ヶ畑街道」に出ると、いきなり賀茂川に堰堤が見えます。目的の「柊野堰堤」です。
上流は穏やかな流れで川岸も広いですね。この一帯は「柊野堰堤」の70年間のたまものです。
「柊野堰堤」です。
対岸の農業用水の取水口がはっきりと確認できます。「西賀茂用水」です。「西賀茂用水」も水路が続いているので、そのうち下流まで歩いてみましょうか。
昭和9年(1934年)の「室戸台風」や昭和10年(1935年)の「京都大水害」の豪雨で、京都市内も大きな災害に見舞われえました。この時には「御薗橋」や「五条大橋」も流されたそうです。そこで、この地に砂防ダムを建設することになり「柊野ダム」として堰堤の幅約96メートル、高さ約7メートル、計画貯砂量は15万立方メートルのダムが作られました。戦時中には完成したそうです。
そして70年の月日のうちに大量の土砂が堆積するに至ったわけです。
緑が映えてきれいですね。砂防ダムであったのですが、風景の中に溶け込むようになって自然な雰囲気です。
すぐ下流にある「庄田橋」です。
「庄田橋」は「上賀茂」と「西賀茂」をつなぐ生活道路ですね。
「庄田橋」から見た「柊野堰堤」です。
「庄田橋」から見た下流の住宅街。だいぶんと開発が進んで住宅がいっぱいになりましたけど、昔は、冒頭で私が歩いていた山麓の高台の部分にしか集落がありませんでした。
上賀茂、西賀茂地域は賀茂川を中心とする河岸段丘になっていて、「段丘下」のこの地域は災害が多かったのであまり人が住む場所ではなかったのです。現在は上流にも砂防ダムがいくつか築かれており災害の危険性は低下したのでしょう。どんどんと住宅が建てられています。でも、最近は「想定外」の災害が次々と起こっており、小心者の私なんかは、なかなか住もうという気にはならないんですけど。ま、あんまりこんなことを書くと、住んでる人とか、建築屋さんからクレームが来そうなのであれこれ言うのはやめましょうか。
平時、自然は美しく、心安らぐものではありますが、一瞬にして牙をむくこともあります。おりしも超大型の台風10号が西日本に近づいています。災害に対する備えを怠らないようにしましょうね。
アクセス
- 京都市バス「庄田橋」下車、徒歩2分