火迺要慎(ひのようじん)
昨日に引き続いて、愛宕山をめぐります。
今回は、「ケーブル愛宕駅」を後にして、「愛宕神社」に参詣しましょう。せっかく愛宕山まで来たのですから、お詣りしない手はないと思います。やっと、いつもの「ガイドブックに載らない京都」らしくなってきました。
「愛宕神社」は「火迺要慎(ひのようじん)」のお札で有名な火伏せ・防火に霊験あらたかな神様です。京都では、庶民の台所から、有名料亭の厨房まで「火迺要慎」のお札があちこちに貼られています。一般の会社であっても火の気のあるところにはこのお札が貼られているぐらい、京都人にとってはポピュラーなお札です。
ところが、その「愛宕神社」は、霊峰愛宕山の山頂にあり、標高924mまで自分の足で登らないと、お札をいただくことはできません。(通販じゃないけど、送金すれば郵送はしていただけます。)
一般の方は、京都バスの「清滝」バス停まで行ってから、健脚で2時間、普通の人で2時間半から3時間ぐらいかけて、山頂の神社まで「表参道」を登ります。「表参道」は石段や、階段状に整備されているので、歩くこと自体に困難さはありませんが、神社までの4㎞のうち、感覚的には半分以上が階段です。登山が趣味の人ならわかると思いますが、階段というのは歩幅や足の振り上げの高さが物理的に制限されるので、疲労する程度が半端じゃありません。よっぽど山道や斜面を登っている方が足に対する負担は少ないです。
京都のお年寄りに聞くと、「愛宕神社」に参詣したことがない方はほとんどおられませんが、若い人に尋ねると、今度は逆に参詣したことのない人がほとんどです。他府県から愛宕山に登るために来る人はいても、京都観光のついでに「愛宕神社」に参詣する人もいないでしょう。
なので、今回「ガイドブックに載らない京都」で取り上げました。
昨日の続きからなので、「清滝」からの「表参道」ではなく、途中の「ケーブル愛宕駅」から始まりますが、ご了承ください。
廃墟となった「ケーブル愛宕駅」を後にして、一路「愛宕山表参道」を目指します。
「ケーブル愛宕駅」の駅前広場から、南西の方角に広めの道が連なってますので、その道に沿って歩きます。とっても平坦な道です。
道の両脇には、「愛宕遊園地」の跡と思われる石垣や、途中の茶店と思われる土台の基礎部分などが点在しており、当時の賑わいぶりを思わせます。
10分も歩かず、太い道が横切っているところに来ました。「愛宕山表参道」です。
「愛宕山表参道」の出たところで、左手を見るとすぐそこに「水尾別れ」の休憩小屋が見えます。
反対側の右側を見ると、何やら建物が目に入ります。こっちの方が「愛宕神社」になりますので、歩を進めます。
さっき見えていたのは「ハナ売場」と呼ばれる建物です。
火伏の「神花樒(しんかしきみ)」を売っていたところだそうです。
では、階段を上がっていきましょう。これぐらいの段差の階段ならば楽ですね。
亀岡方面の霧は晴れましたが、まだ少々流れているようですね。じっと見ているとゆっくりと霧が流れて幻想的な風景です。
先ほどの「水尾別れ」から下山すると到達する「水尾」の里です。「柚子の里」と知られていて、JR嵯峨野線「保津峡」駅から、自治会のバスが運行されています。一般の方でも乗れるバスですよ。
黒門(京口惣門)
道に沿ってポチポチと登ります。高度が上がるとともに寒くなってきます。
さらにもう少し上がると、残雪があります。そして、見えてきました。
「黒門」です。元々あった「白雲寺(はくうんじ)」の惣門です。「愛宕神社」は神仏習合の「愛宕権現」を祀る「白雲寺」として信仰を集めていました。
「黒門」の説明書きです。ここに書かれていますが、「黒門」は京都からの登り口で「京口惣門」と呼ばれていて、丹波からの登り口「丹波口」にも門があったそうです。愛宕神社にはいろいろなアプローチルートがあります。
黒門の中はもう境内といってもいいほどの雰囲気です。でも雪も増えてきましたよ。またまた階段を上ります。
本格的に境内に
今までは、雪が解けて道がぬかるんでいましたが、ここまで来るとバリバリと霜柱や氷の割れる音がします。
そろそろ終点ですかね。それでも階段です。
「嵯峨消防分団」の方々が、ふもとの「清滝」から参道沿いに建てている案内札です。道中4㎞の100mごとに40本建てられています。
境内ですが、まだまだ階段を上ります。一歩上るごとに寒さが増していきます。
あれ、「41/40」がありました。「火迺要慎」、タバコやバーナーなどで火事を起こさないよう気を付けましょう。
平坦なところに出てきました。社務所や休憩場所、トイレなどがあります。
多くの人がお詣りに来るのでトイレがあります。お世辞にも清潔とは言えないですが、ここにあることがとってもありがたいトイレです。維持してくださっている方々には感謝です。
休憩場所から、「桂川」がちらっと見えました。
さて「本社」の方に行きましょう。どんどん奥の方に歩いていきます。
公衆電話もあります。
立派な「社務所」です。
平坦な道の最期にまたまた階段が...とほほ。
階段の手前には「休憩所」があります。がらんとしていて何もありませんが、歴史を感じさせる休憩所です。雨の日にはハイカーにとって、とてもありがたい広さがあります。ちょっと中を拝見。
温度計があります。広告のお店はまだ存在しているのでしょうか。
0.9℃というところですね。寒い。
で、じたばたしてますが、この階段を上らねば。
お、休憩所の反対側に派手な看板が。鳥天狗「愛宕太郎坊」が神使である猪にまたがった絵です。
「片倉小十郎奉納絵馬」について書かれています。
もう、仕方ないので登ります。
振り返ると...雪で氷でツルツルです。底の柔らかいトレッキングシューズで来てよかったです。
総本宮 愛宕神社
滑りそうになりながら階段を上がりました。
もう少し。鳥居が見えてきました。
まぶしい「愛宕神社」の神額。
やっと「神門」までたどり着きました。
「神門」をくぐると...また階段... でもあれが「本社」です。もう少しです。
上がってきました。日の丸の旗が迎えてくれています。
さすがに手水舎には水がありません。
はるばると厳冬の中をやってきました「愛宕神社 本社」です。
「愛宕大神」の神額が輝いています。よく考えると、ここまで危険と苦労の連続でした。
おお、すごい雪が屋根から落ちています。
「授与所」です。「火迺要慎」のお札はここでいただけます。
「本殿」の欄間。縁起物の鶴。
精悍な「龍神」。
そして今年の干支であり、「愛宕太郎坊」のまたがっていた猪です。
「本社」には五柱が祀られています。
神幕でちょっと見えませんね。
横からチラッと、ご本体を。
奥の宮の方にお詣りしましょう。
まずは「若宮社」です。「雷神」ですね。
とても大きくて立派です。
ご神体が祀られています。
先ほど、階段下に説明書きがあった「片倉小十郎奉納絵馬」の現代版です。
嘉永元年の絵馬です。「愛宕山大権現」の時代ですね。
「奥宮社」です。
なんと十五柱が祀られています。
近年作り直されての火とてもきれいです。
「若宮社」の背後に鬼瓦がありました。
「本社」の外の摂社に行きましょう。
ちょっと見えづらいですが...
「神明社」と...
「熊野社」だと思われます。
狛犬にも氷柱。
さて、摂社にお参りしながら下山しましょう。
「本社」前の階段途中にある「稲荷社」です。
外人さんが喜びそうな鳥居が連なってます。
自然の中の神社という感じがとてもいいのですが、しかし寒いですよ。
白髭社
階段をもう少しおりましょう。行きしに摂社があることを確認しているところがあります。
もう少し下に鳥居がありますね。見えますでしょうか。
「白髭神社」です。
「白髭明神参道」の石碑もあります。
いきなり山道です。階段よりはいいです。
と、階段が...
負けずに上りましょう。
やってきました「白髭神社」です。
他にも祀られていますね。
「白浪社」「白髭社」「修羅髭者」でしょうか。ちょっと見えません。
「白髭神社」の反対側の入り口に来ました。
京都市内が見えます。うっすらと雲がかかっているのではっきりとは見えません。
「桂川」の蛇行です。圧縮効果でアマゾンの蛇行のようですね。
「月輪寺」から「清滝」へ抜けるルートです。
「愛宕山」にはいろいろなルートがあります。
このルートをたどろうかとしばらく悩みましたが、「表参道」から下りることにしましょう。
ウサギ? の足跡でしょうか。
先ほどの「社務所」前の広場で山の景色を見ながら、食事をいただきます。木のベンチは積雪で座れないのですが、雪を払い、クッションを持ってきているので余裕です。
山や京都市内の景色が楽しめ満腹です。さて、ゆっくりと下山しましょう。
怒涛の下り やっぱり階段
「水尾別れ」までは重複になるので省略します。
で、「水尾別れ」でも「清滝」に下りようか「水尾」に下りようかと迷いましたが、今回は「表参道」にこだわって、「清滝」まで下りることにします。
「水尾別れ」を過ぎても、階段状の山道は変わらず、あちこちで倒木が行く手を邪魔します。昨年の台風で多くの木々が倒れ、谷側の道が崩落していたりと災害の跡が生々しく残ってます。
「カワラケ投げ」をしていたところだそうです。
ちょっと雲で景色がよくありませんが、高いところへ来ると、物を投げたくなるのは昔から変わらないようですね。でも、下に人がいるかもしれないので山では物を投げることは厳禁です。
崩落個所を過ぎます。
時々、冬の日差しが差し込みます。日が当たると暖かいですね。
途中で大変なものを見つけました。杉の倒木で、お社と思われるものが押しつぶされたようです。もしかして、これは「大杉大神」でしょうか。GoogleMapでも載ってます。
休憩所の屋根も耐えてます。なんか、クリーンヒットですね。
ここは「茶屋跡」。参道沿いにはたくさんの茶屋がありました。
二十五丁目で「ふかや」というお茶屋さんがあったところです。
「ふかや」さんは「愛宕ケーブル」が開通した昭和初期に「清滝」の「渡猿橋」の近くに移転されたそうです。現在でも営業されていて「志んこ」も食べられるそうです。
「丁石」の説明書きがありました。「鳥居本」の一の鳥居を一丁目として五十丁目まであるそうです。
さて、休憩所を後にして、また下山開始です。
杉林の中を軽快に下りていきます。途中一度右足のふくらはぎがつりました。
二十丁目まで下りてきました。「一文字屋跡」です。
「一文字屋」は「愛宕山鉄道」開通後は「ケーブル愛宕駅」の2階で食堂を営んでいたお店です。
「壺割坂」の説明書きです。
つづら折りで、登るのは大変そうです。私は降りる方でよかった。
平たい土地の真ん中に井戸と思しき跡が。
中をのぞいてみると、水面が見えます。現役の井戸ですね。お茶屋さんか何かがあったところでしょう。人が落ちないように金属製の蓋がしてあります。
最近、山の中で供えられている花は、原色のハデな造花が多いですね。
神社の柱がいっぱいです。
後ろの杉の木は落雷で焦げたようですね。それにしても多い柱の数々。
「嵯峨小学校 清滝文教場跡」の案内板です。ここは火災で焼失後、清滝に移されたそうです。その清滝の分教場も「愛宕鉄道」が開通して廃止となりました。
もう、林となってわかりませんね。
道のわきのお助け水。
おお、「鋼索線」が見えたぞ。
「ケーブル清滝駅」からの並走部分ですね。やっと帰ってきました。
「1/40」の立て札まで来ました。ここが起点ですね。
清滝
「愛宕山表参道」の起点になるところまで来ました。
民家があります。昔は参拝客向けのお茶屋さんや宿泊施設だったのでしょう。
「愛宕山表参道」入口の鳥居です。
その横に「ケーブル清滝川駅跡」の説明書きがありました。
この上に上ると、出発点の「清滝川駅」ホームです。
「金鈴橋」まで戻ってきましたよ。なぜかほっとします。
「金鈴橋」から見た「渡猿橋」です。今度来る時には「ふかや」さんで「志んこ」をいただきましょうか。
「清滝」の駒札もあったんですね。
「清滝トンネル」です。
現在は2本のルートがあります。「清滝トンネル」は信号がある口語片側通行で、「試峠」は清滝から市内向けの一方通行です。渋滞緩和のためです。
「清滝トンネル」です。一応、歩行者も通れます。
ここも。出るそうです。お~こわ。そのうち歩いて通ってみましょう。
「清滝」バス停のロータリーでバスを待ちましょう。
バス、出発です。青信号。
京都市内へ向かって帰ります。お疲れさまでした。
ということで、3回に分けて「愛宕山ケーブル」の跡を追い「愛宕神社」にお詣りする旅を紹介しました。今考えても、けっこう無鉄砲なことをしてきたと思います。「ケーブル」の鋼索線跡は行かない方がいいと感じます。くれぐれも自己責任という言葉を肝に銘じてください。
アクセス
- 京都バス「清滝」下車、徒歩2時間30分~3時間30分