おっかなびっくり
2年前の台風で京都市内近郊の山道はどこもかしこも荒れ果ててしまいました。特に杉の木の多い北方の山々では倒木がはなはだしく、ハイカーが良く歩いていた山道もしばらく通れなかったり、コース変更を余儀なくされていたりしました。
その中でも愛宕山の「梨木谷林道」は特に倒木が激しくて、1年近く完全に通れない(無理したら通れるのですが危険な状態)が続いていました。所有者の方々や有志の方々の甲斐あって、最近やっと通れるようになったという話が聞かれるようになってきました。
ほんとに通れるんやろか? という疑問もあったので、通れなかったら引き返さば良いかという気持ちで出かけることにしました。少々の倒木越えや迂回があっても、それはそれで冒険になるかなと、えらそうに考えていたのですが、基本はびびりなので腰が引けた状態で出発です。
「梨木谷林道」は「清滝」から、先日紹介した「サカサマ峠」に続く林道です。まずは「清滝」を目指しましょう。そうなると、JR嵯峨野線「嵯峨嵐山駅」から少し歩いて京都バス「嵯峨小学校前」からバスで「清滝」を目指しましょう。
8月5日(水)。朝の「丸太町通り」です。6:40頃なのでいつも通りがらがらに空いてます。通勤ラッシュの前ですね。
「嵯峨小学校前」のバス停に着きました。バスがくるまでに10分ほどあります。すぐ横の「嵯峨小学校」に咲いている花です。なんちゅう花なんか知りません。
この花はわかりますよ。「サルスベリ」でしょ。
なんやかんやで京都バス62系統「清滝」行きが来ました。乗客は私を含めて3人です。
「清滝トンネル」を越えて「清滝」バス停に到着です。
「付近観光案内図」をチラ見。
今日は昔からの参道の方を歩きましょう。左の道を下りてきます。
すぐに大きな橋に出て「清滝川」を渡ります。
今日の「清滝川」の流れは静かです。
昔はお茶屋さんや宿であった家々。
表参道の鳥居に出ました。でもここには進まず右手の方に行きます。
と、また橋が現れるのですが、これは渡らずに左の方に行きます。
「右 月輪寺」の石票。
どんどんと進みましょう。
「歓喜山国有林」の看板。
暫くは快適にアスファルトの道を進みます。
ここで「東海自然歩道」と「京都一周トレイル」は右下の方に降りていきます。
おっと、でっかいクロアゲハ。
私はまだアスファルトの道を進みます。
「大杉谷林道」の分かれ道。まだアスファルト道です。
川の対岸の山肌が地滑り起こしています。
「月輪寺」への登り口です。
ここで一番左の方の道を進むと「空也滝」に行けます。
私はまだアスファルト道。
「進入禁止」の看板。わざわざこんな看板立ってるところを見ると、やっぱり腰が引けてしまいます。
とうとうゲートに到着しました。ここで小休止。暑いですけど、上着を着替えて怪我をしにくい部厚めの生地のものにしました。転倒や斜面の滑落はよくやりますので、今日も備えておきます。ゲートの端の所からお邪魔するのですが、有刺鉄線が張られていたりして気が引けます。所有者は入ってほしくないんでしょうね。ごみを捨てて帰るとかのマナーの悪い人もいるし、遭難でもされた日には人様の土地で勝手なことすんなよ邪魔くさいなぁってお怒りになることだと思います。ま、自分が迷惑人にならないよう重々気を付けましょう。
私は登山家でも冒険者でもないただの「山歩きの人」なので、たいした装備は持ち合わせていません。履きだして2年になる、1万円ぐらいのトレッキングシューズとバーゲンプライスのときに買った一応アウトドアメーカーものトレッキングパンツ(夏にしては厚め、8,000円ぐらい、ほんとに暑い)に、これまた夏にしては汗をかきそうな生地の長袖シャツです。加えて夏用の手袋(\3,000)でこけた時のけが防止と、日焼け防止のための帽子(\3,000、実はレディースでうなじの所にヒラヒラがあって日焼けしないようになってる、はっきり言っておっさんには似合わない…)で山の中を歩いてます。
実はハイカーの着ている「なんとかテック」とかの札がいっぱいついた原色系のやつが苦手です。最新のテクノロジーは素晴らしいと思うしスポーツマンライクでかっこいいやんて言う人もいますけど、それはやはりスポーツマンのかっこであって、神社やお寺に行って「おお、平安時代が感じられるぞ!」とか言ってる地味系のおっさんには似合うわけがありません。
てなことで、そのまま電車に乗ろうが四条通を歩こうが背景に溶け込んで目立たない容姿が一番落ち着きます。
梨木谷の倒木地帯突入
ま、そんなことはさておき、前に進みましょう。どんな景色が待ってるかな。ゲートを超えると、アスファルトはほぼなくなり、地道とコンクリートになります。
土砂崩れの土砂が道を覆っています。これぐらいなら何ともありません。
倒木第1号。低いものは切ってあるので、下を潜り抜けられます。
山の斜面からの土砂崩れ。
こんな感じの道が続きます。
倒木はけっこう丁寧に切断されています。
まだ、序の口なので歩きやすいですね。整備して下さった方々に感謝です。
そろそろ激しくなってきました。これ、倒木のままやったら、進むのに一苦労ですね。
踏み固められた地道。
まわりの斜面は一面倒木だらけで、台風のすごさがわかります。
倒木もさることながら、地面が削られているところが多いです。
少し道が細くなってきましたが。倒木の幹はきれいに切断されていて通行に支障はありません。
ここしばらくは人が通らなかったであろう道ですから、獣が出て来ないかも心配です。朝一からクマさんと戦うのは真っ平御免ですよ。一応、チリンチリンつけてます。効果のほどは不明ですが。
下の道が崩れた時に造ったとも割れる迂回路。でも下の道も元通りになっています。
お、また倒木帯のようです。そろそろ出るかな...ちょっと身構えます。
でも肩透かし。ここもけっこう広く通れるように木が切断されています。
まだ歩きやすいですね。いつ倒木が行く手を阻んでも乗り越えて行けるように気持ちだけは臨戦態勢です。
細いですが、道は続いています。木が切られている方向に進めば道を間違うこともありません。倒木ジャングルです。
あまり人が来なかったからか、道沿いにも杉苔が繁茂してます。
倒木のトンネル。
これはしかし、木が切られてなかったら、とんでもなく時間がかかりそうですね。
ちょっと振り返ります。京都市内はガスっていてよく見えません。
横の山肌。また大きな台風が来たら倒れそうですね。
去年は ましでしたけど、今年はどうなることやら...7月は台風の発生がなかったようですけどその分8月や9月にたくさん来るというのはやめてちょーだい。
これだけ手入れする労力たるもの、相当だったことでしょう。1年以上通れなかったというのも良くわかります。
「梨木大神」まで来ました。
でも、先客が大神の前で食事をしてらっしゃったので写真は撮れませんでした。ま、ええか。代わりに「山の案内図③ 梨木大神」です。
私はまだつかれていませんので、もう少し進んで倒木帯を抜けてから休憩としましょう。
しばらく歩くと倒木帯を抜けて、また森林帯の中を歩きます。
コンクリートの道が続き、ところどころ土砂が流れ込んでいますが、歩行に支障はありません。
荒れてはいますが、けっこう快調に歩けます。
徐々に道が狭くなっていきます。
土砂崩れの跡。多分大雨のすぐ後には道の上を川のように水が流れていて歩きにくいのではないでしょうか。
こんな風に清流が道を横断しています。
だんだんと道の傾斜が強くなってきました。
部分的ではありますが、土砂崩れも多くなってきています。
道は続きますが、荒れ果てています。
コンクリートで覆われていることから、昔は作業用の車が入っていたのでしょう。今となっては到底無理ですね。
日陰なのでちょっと休憩して水分を補給します。あまり長く休むと余計にしんどいので適当に。
また土砂崩れ。基本は川に沿って歩きます。
道が水の流れで無くなってコンクリートの土手だけが残ってます。
もう、川か道かわかりません。いっしょくたになりました。
川の右岸を歩きます。(ここでは南側)
対岸の小屋。倒壊。
川の左岸は杉の植林が残ってますね。少し岩登り。こんなところで滑っても大丈夫なように厚手の衣服と手袋で備えています。
一瞬、沢を渡って右手の方に行きたくなりますが、少し左の草の生えたところに道は続いています。(右からもいけるのかもしれませんけど...)
少しわかりにくいですが道が続いています。
振り返っても相変わらず京都市内は見えません。がっくし。
沢と一緒になって歩きます。ここまで来ると涼しいですね。
倒木も減って、やっと普通の山らしくなってきました。
やっぱり山はこうでなくっちゃ。めっちゃ涼しいよう。
この辺りの杉の木はけっこう太いです。
空が近くなってきました。
道もほんとに細くなってきました。もうじき抜けるかな。
ここまで上がってくると、下の方に比べて飛んでる虫が少ないです。
ほんでもって水の流れがきれいで、見た目にも涼しく感じます。
沢がホントに細くなってきました。
もうチョロチョロしか流れていません。
沢はほぼ消滅して道になってしまいました。
どこにでもある普通の山道です。
お、もうそこか?
「サカサマ峠」に抜けました! やったぁ。この木の看板の所からゴソゴソと出てきました。降りるときにはなかなかわからないですね。この状態じゃ。
南の方に続く道。はて、この道はどこに続くのでしょうか? やっぱり探検してみないといけないですね。今後の課題にしておきましょう。
「裏参道入り口」の看板があるところへ続く道。この道を行けば「高雄」方面に抜けられます。
通称「首なし地蔵」さんです。
「山の案内図① 首なし地蔵」の案内看板。
せっかくですから、ちょっと休憩しましょう。十分水分を取ります。
今度は「裏参道」で愛宕山を目指します。
前回見晴らしの良かった休憩地点ですが、今日は全然見えません。
林の中は木漏れ日で気持ちが良いです。
古代から多くの人が通った「裏参道」。これからも多くの人がこの道を歩くことでしょう。
少しだけ岩場と斜面があります。
「山の案内図② 首なし地蔵方面下山口」の案内看板です。石切り場のすぐ横です。
もう少し歩くと「ジープ道(樒原からの道)」に合流です。
やっと見えました。「ジープ道」です。なんかホームグランドに帰ってきたという感じです。
静かに京都市内を見つめるお地蔵さんたち。
この標識のシリーズもだいぶんと古くなって読みづらくなってきましたね。そろそろ整備が必要かな。
やっぱ京都市内は絶望ですね。広沢の池がかすかに見えます。
愛宕神社の方に行きましょう。
最初に紹介した「大杉谷林道」から通じる道。
「山の案内図⑧ 月輪寺・大杉谷方面下山口」の案内看板。
「月輪寺」を通って「清滝」まで下山できます。
石段前の休憩所が見えてきましたよ。
今日はお詣りしている人も少なそうです。ま、時間が早いですからね。
今日も本殿の方には失敬してここで手を合わさせていただきます。
休憩所も無人。まだ10時前ですからね。
境内も静かです。左手のベンチで少し休憩してカロリーと水分補給しましょう。
静かで涼しい山の上。下界の喧騒を忘れてしばしの間、心が和みます。一年中こんなところにいられたらいいなぁ、と現実逃避気味、引きこもり気味の心になります。ここで生活するということは、これまた幾多の困難があって大変なことなのでしょうけど、ビジターの私には良いところしか見えませんので、あこがれてしまいます。
さて、昼からはこなさなければいけない用事も少々ありますので、後ろ髪惹かれる思いでそろそろ下山です。帰りはいつも通り「表参道」を少し下って「つつじ尾根」からJR嵯峨野線「保津峡駅」を目指しましょう。この道はもう何回も紹介しているので割愛します。(記事がだいぶんと長くなってしまってますもんね)
腰が引けたまま、おっかなびっくりで登った「梨木谷林道」。おかげさまで、何の苦労もなく登りきる事ができました。整備して下さった方々、本当に感謝しています。
さて、今回の山歩きでは(本文には紹介しませんでしたが)「水尾別れ」から「大杉谷林道」へ抜ける道があることがわかりました。まだ歩いたことがないので、そのうちチャレンジしてみましょう。
アクセス
- 京都バス「清滝口」から徒歩25分程度